相手が段々ホンキになってきました
二週間後、再び「メグミ」がメル友探しサイトにアクセスしてみると、二十通もの山田からのメールが届いていました。
「最近忙しいのかな?」「もう、こないのかな?」などと書かれたそのメールからは、あきらかに、山田の「メグミ」に対する切ない思いがにじみ出ていたのです。
「メグミ」が二週間ぶりにネットに現れたのを知ると、すぐに、山田は、メル友探しサイトからメールを送ってきました。
「メグミちゃん、こなかったから寂しかったよ」
山田は、すでに「メグミ」に対してほのかな恋心を抱きはじめていました。
僕は、じめたとばかりに、「え―、そうやってからかわないでくださいよ―、本気にしちゃいますよ」と、相手に気を持たせる内容のメールを書いて送り返してやったのです。
この様子を、僕の後ろで見ていた友達は、「お前に編された男ってやつ見たいよな」と、腹を抱えて笑い転げていました。
僕も同じようなことを考えていました。
まもなく、山田から返事が届きました。
そこには、こんなことが、書いてありました。
「僕はメル友探しサイトをやっている女の子には興味はなかった。でも、君のことを考えると、好きな絵も描けなくなってしまう。一度会いたい」
もちろん、会うわけにはいきません。
「え―、でも、バイトとか、忙しいし……」などと、思いつく限りのあの手この手を使って、山田を焦らし続けたのです。
ところが、「メグミ」に恋焦がれる山田は、ついに我慢ができなくなってきたらしく、「電話でもいいから話そうよ」などと言って、メル友探しサイトで直接的なアプローチをする素振りを見せはじめました。
ここまでくれば、後は相手のメル友探しサイトでのアプローチをいかにかわしていくかです。
「え―、でも、親がうるさいんですよ―」
とその場しのぎの理由を書いて返信メールを送ると、山田はすかさず、「バイト先にちょっと見に行くだけでもいいじゃない」と、返してきました。
山田はかなり本気のようでした。
挙げ句に、「住所から探しちゃおうかな―」と、ストーカーまがいの言葉を「メグミ」宛てに送って寄越したのです。
ちなみに、山田に提出してあった「メグミ」の個人データのうち、住所と本名は実在する女性のものです。
山田には、「メグミ」の素性を疑う理由はもはや何もなかったのです。
ネット上でのバーチヤルな女子高生「メグミ」にぞっこんのようでした。
僕は、そんな山田の気持ちを確かめるために、再び「タケシ」を登場させて、「メグミ」宛てに、こんなメールを送りました。
「メグミさ―、シスオペに狙われてるんじゃないの、シスオペってオタクっぽいから気をつけろよ」
あらかじめ予想していたことですが、「タケシ」からのメールは、「メグミ」のメール箱には届いていませんでした。
シスオペである山田が操作を加えて、自分にとつて不利なメールを聞に葬ったのはいうまでもありません。
これも、いつてみれば、シスオペの特権のひとつなのです。
メル友探しサイトの世界ではよくあるという話ですが、いざ自分で体験してみると、なかなか怖いものです。
その後も、山田からは「君と一分だけでもいいから、話がしたいよ」といつた内容のメールが「メグミ」宛てに何十通も届きました。
女の身になって考えると、男からのこういったしつこいメールは、あまり気分のいいものではないのかもしれません。
「やっぱり、メル友探しサイトをやってる男って、気持ち悪い」などと思ってしまうのでしょうが、男の僕には、山田の気持ちが痛いほどよくわかるのです。
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