Archive for the ‘管理人の暇つぶし日記’ Category
そろそろ切り上げてみたいと思います。
メル友探しサイトのシステムオペレーターである山田の「メグミ」に対する感情は、日増しに高まっていきました。
このあたりが引きどきなのです。
もちろん、これ以上メル友探しサイトのシステムオペレーターである山田の一途な思いを弄ぶことに、どこか後ろめたさを感じはじめてきたのも、正直なところです。
僕は、「メグミ」をメル友探しサイトのシステムオペレーターである山田のいい思い出のままにしておくためにも、ネット上から「メグミ」の存在を消すことにしました。
「シスオペさんのことを、お兄さんのような人だと思っていました。好きとか嫌いとかではなくて、相談に乗ってくれる優しいお兄さん。メグミはお兄さんもお姉さんもいなかったから、お兄さんみたいなシスオペさんに憧れていたんだと思う。でも、憧れていたお兄さんを悩ませていたなんて、悪いことをしてしまいました。もう顔も見せられません。どこかの道ですれ違っても、お兄さんはわからないと思うけど、私は多分わかると思います。女の勘ですよね。その時は笑顔で後ろ姿を眺めていたいと思います」
山田宛てに送られた「メグミ」からの最後のメールは、たしかこんなふうに書かれていたと思います。
もっとも、僕は好奇心から、この後も一度だけ「メグミ」のメール箱を開きました。
そこには、メル友探しサイトのシステムオペレーターである山田からの、「メグミちゃん。憧れで終わるなんて寂しいよ。僕の中にあるメグミちゃんの存在が大きくなって止めることができない……」といった、切実な思いが綴られていました。
ちよっぴり悪いことをしたと、反省したのはいうまでもありません。
僕のパソコン通信歴も今年で十年目を迎えましたが、この間、百人近くの「ネットおかま」に遭遇しました。
一度「ネットおかま」の味を覚えると止められなくなる人もいるようです。
この時は、結局、相手の顔を見ずに尻切れとんぼで終わりにしてしまいましたが、なかには、こういったやりとりを、ネット上に実名で公開するなど、相手の立場を平気で貶める悪質な連中もいたりします。
もしあなたが、メル友探しサイト上で、女の子をナンパしたいと考えているなら、充分気をつけたほうがいいかもしれません。
え? おまえもそのひとりだろうって? 僕は、決して、あなたに迷惑をかけるようなことはしませんから、その点はご安心を。
相手が段々ホンキになってきました
二週間後、再び「メグミ」がメル友探しサイトにアクセスしてみると、二十通もの山田からのメールが届いていました。
「最近忙しいのかな?」「もう、こないのかな?」などと書かれたそのメールからは、あきらかに、山田の「メグミ」に対する切ない思いがにじみ出ていたのです。
「メグミ」が二週間ぶりにネットに現れたのを知ると、すぐに、山田は、メル友探しサイトからメールを送ってきました。
「メグミちゃん、こなかったから寂しかったよ」
山田は、すでに「メグミ」に対してほのかな恋心を抱きはじめていました。
僕は、じめたとばかりに、「え―、そうやってからかわないでくださいよ―、本気にしちゃいますよ」と、相手に気を持たせる内容のメールを書いて送り返してやったのです。
この様子を、僕の後ろで見ていた友達は、「お前に編された男ってやつ見たいよな」と、腹を抱えて笑い転げていました。
僕も同じようなことを考えていました。
まもなく、山田から返事が届きました。
そこには、こんなことが、書いてありました。
「僕はメル友探しサイトをやっている女の子には興味はなかった。でも、君のことを考えると、好きな絵も描けなくなってしまう。一度会いたい」
もちろん、会うわけにはいきません。
「え―、でも、バイトとか、忙しいし……」などと、思いつく限りのあの手この手を使って、山田を焦らし続けたのです。
ところが、「メグミ」に恋焦がれる山田は、ついに我慢ができなくなってきたらしく、「電話でもいいから話そうよ」などと言って、メル友探しサイトで直接的なアプローチをする素振りを見せはじめました。
ここまでくれば、後は相手のメル友探しサイトでのアプローチをいかにかわしていくかです。
「え―、でも、親がうるさいんですよ―」
とその場しのぎの理由を書いて返信メールを送ると、山田はすかさず、「バイト先にちょっと見に行くだけでもいいじゃない」と、返してきました。
山田はかなり本気のようでした。
挙げ句に、「住所から探しちゃおうかな―」と、ストーカーまがいの言葉を「メグミ」宛てに送って寄越したのです。
ちなみに、山田に提出してあった「メグミ」の個人データのうち、住所と本名は実在する女性のものです。
山田には、「メグミ」の素性を疑う理由はもはや何もなかったのです。
ネット上でのバーチヤルな女子高生「メグミ」にぞっこんのようでした。
僕は、そんな山田の気持ちを確かめるために、再び「タケシ」を登場させて、「メグミ」宛てに、こんなメールを送りました。
「メグミさ―、シスオペに狙われてるんじゃないの、シスオペってオタクっぽいから気をつけろよ」
あらかじめ予想していたことですが、「タケシ」からのメールは、「メグミ」のメール箱には届いていませんでした。
シスオペである山田が操作を加えて、自分にとつて不利なメールを聞に葬ったのはいうまでもありません。
これも、いつてみれば、シスオペの特権のひとつなのです。
メル友探しサイトの世界ではよくあるという話ですが、いざ自分で体験してみると、なかなか怖いものです。
その後も、山田からは「君と一分だけでもいいから、話がしたいよ」といつた内容のメールが「メグミ」宛てに何十通も届きました。
女の身になって考えると、男からのこういったしつこいメールは、あまり気分のいいものではないのかもしれません。
「やっぱり、メル友探しサイトをやってる男って、気持ち悪い」などと思ってしまうのでしょうが、男の僕には、山田の気持ちが痛いほどよくわかるのです。
いろいろと手の込んだことをしてみました
▼ナンパ男「タケシ」の登場
メル友探しサイトに入会して二週間後、僕は、そろそろ山田に具体的なアプローチをかけようと思い、「彼女とか、いるんですか?」など書いて、探りを入れてみました。
しかし、この時は、「一年前に別れた。当分は、彼女はいらない」と、そつけない返事でした。
今から思えば、多少の気取りがあったのでしょう。
このままでは、「メグミ」の誘いに山田が乗ろのは難しいと判断し、僕は作戦を立て直しました。
急遽、「夕ヶシ」とぃぅ名の、もうひとりの架空の人物をメル友探しサイトに登場させることにしたのです。
「タケシ」のキャラクターは、ナンパ好きな男です。女好きの「タケシ」が、メル友探しサイト上で「メグミ」を口説けば、山田も放っておかないだろクと踏んだからです。
つまり、一人二役を演じて、山田と「メグミ」と「タケシ」との三角関係を意図的に作り出そうと考えたのです。
もちろん、僕の企みは、期待以上の成果を上げました。
まず、既成事実を作り出すために、「タケシ」から「メグミ」宛てに、「三度会おうよ」というメールを何度も送りました。
そして、しばらくしてから、今度は「メグミ」が山田宛てに、「こんなメールが届くんですけど、 一度会ってみても平気ですか?」と、相談のメールを送るのです。
すると、すぐに、
「それは、ちょっと考えたほうがいいかな。メグミちゃんはまだ知らないと思うけど、オンライン上でナンパしてくる人って多いんだ」との山田からの返事が、「メグミ」宛てに届きました。
シスオペである山田の心配を買おうという僕のメル友探しサイトのネカマ作戦の企みに、まんまと引っかかったのです。
とりあえず、第一の作戦は成功しました。
▼焦らし作戦
引き続き、山田には、「メル友探しサイトでは心配してくれてありがとうございます」との返信メールを送り、さらに山田の気を引くために、再度「タケシ」から「メグミ」に、「何で会ってくれないの?家だって近いんだし、いいじやん」といった誘いのメールを書いたのです。
冒頭でも説明したように、草の根ネットのシスオペは、会員同士のプライベートなメールのやりとりを簡単にチェックすることができるのです。
案の定、山田は、「タケシ」から「メグミ」に当てたメールをしっかりとチエックしていたようです。
翌日、山田からは、
「メグミちゃん、本当に気をつけてね。タケシって結構ワルだから」
といった、「メグミ」あてのメールが届いていました。
次第にこちらのペースに巻き込まれつつあった山田に、さらに追い打ちをかけるように、「でも私、女子校だから、彼氏欲しいし……」と、暗に相手の気を引くような内容のメールをメル友探しサイトで送ってやったのはいうまでもありません。
予想通り、山田からは、「そんなにメル友探しサイトで彼氏欲しいの?」といった返事が、「メグミ」宛てに届きました。
ここまでくれば、あとは時間の問題です。
僕は、「うん…。こという返事だけ書いた「メグミ」のメールを山田に送り、しばらくは「メグミ」をネットから遠ざけることにしたのです。
もちろん、メルトモ探しサイトでの相手の気持ちを焦らすためにです。
ネカマになって遊んでみました
「ネットおかま」という言葉をご存知でしょうか。
メル友探しサイトをやったことがある人なら一度は耳にしていると思いますが、簡単に言えば、女性を装ってメル友探しサイト上に侵入し、男性会員からのアプローチなどを暗に誘いながら、そのやりとりを弄ぶ連中のことを言います。
メル友探しサイトの場合、相手の顔はもとより、声も聞こえないわけですから、その気になりさえすれば、ネット上で簡単に性別を偽ることができるのです。
とくに、草の根ネットと呼ばれる非営利ネットでは、ニフテイなどと違い、入会手続きがいいかげんなところが多いので、メル友探しサイトによっては、こうした「ネットおかま」の温床になっているところもあるのです。
とはいえ、誰にでもこうした変身願望はあるものです。
以前、インターネットのIRC(インターネット版チャット)で『ネットおかま』やったことある人いますか?」と質問したところ、「ある」と答えたパソコン・マニアがいかに多かったか。
ネット上でのおかま人口は想像以上に多いのです。
何を隠そう、僕自身がそうです。
「ネットおかま」の常習犯だった時期もあります(今でも、ときどきやりたくなったりしますが……)。
騙した相手には気の毒ですが、いろいろ愉快なエピソードもありました。
その中で、とくに傑作だったでネットおかま」体験記を以下でちょっとご披露いたしましょう。
▼狙われたシスオペ
パソコン通信のネットを運営している人をシスオペ(システムオペレーター)というのですが、ネットに会員として参加するためには、名前や住所。
電話番号などの個人情報をあらかじめこのシスオペに提出しなければなりません。
いわば、身元調査のようなものです。
シスオペは、こうしたメル友探しサイトの会員の個人情報を管理したり、メル友探しサイトの会員同士のメールのやりとりをチェックするのです。
そして、この特権を悪用して、提出された個人データやメールをもとに女性会員に接触をはかるシスオペは結構多いのです。
僕がこれから述べる「ネットおかま」体験は、この特権を逆手にとって、シスオペ本人を、まんまと騙した話です。
以前、僕は、神奈川県のとあるメル友探しサイトに、知り合いの女性(十六歳)の名を編って会員になったことがありました。
もちろん、「ネットおかま」をするのが目的でしたが、ターグットは最初からネットの管理者であるシスオペに決めていました。
というのも、後輩がそのシスオペ(二十歳・大学生)と同級生で、「いつも学校でバカにされているので、ひと泡吹かせてやってくださいよ」と、僕に懇願してきたからです。
仮に、このシスオペの名前を山田としておきましょう。
後輩からは、あらかじめ、山田に関する情報をいくつか得ていました。
現実の女の子よリマンガの登場人物の女の子に恋をしてしまうような典型的なマンガおたくとのことでした。
僕は、入会するとすぐに、次のようなメールを、山田宛てに送ったのです。
「はじめまして。弟にすすめられて、初めて入ったのがこのネットです。初心者ですが、よろしくおねがいします。メグミ」
山田は「メグミ」の〈十六歳・女性〉というパーソナルデータを見て、最初は、かなり疑っていたようです。
返ってきたメールには、いくぶん突き放すような雰囲気のメッセージが書かれていました。
しかし何度か、自々しいメールを送り続け、なんとか毎日のようにメル友探しサイトでのメール交換をする間柄にまでこぎつけました。
といっても、依然、内容は、「このソフトを使ったほうがいいよ」とか、「パソコンはなにを使っているの」などといったたわいのないものです。
話を合わせるのはさほど難しくありませんでした。